銀座でギャラリーをやっていた頃、よく行っていたバーがある。
1人で行ったり、オープニングパーティの二次会に作家を連れて行ったり
した。雑居ビルの階段を上がって行き、重い木のドアを開けると、2,3
坪の4人も入れば一杯になってしまうカウンターだけの店だ。
ここの特徴は、音楽がメインだということ。
60〜70年代のプログレッシブを中心としたロックがかかる。
・・というより、ロックをかける空間を維持するためにバーをやっている
というほうが正解だろう。客層も、かつて、バンドをやっていたり、給料
の大部分をレコード代に費やしていたようなマニアが多い。
2年ぶり位にフラッと寄ったのだが、1つ変化があった。
元ミュージシャンのマスターが、赤ん坊を背負っていた。
確か、独身のはずだったが・・。カウンターににこにこと幸せそうな女性
が1人。
なるほど、この間に、結婚したのネ。
二人で、赤ん坊をあやしながら、最小限単位の家族の幸福感が、じんわり
と伝わって来る。こんな、大音響の空間が、赤ん坊にいいのがどうかは、
分かりかねますが・・。
3年間やってみて、銀座で、店を維持するたいへんさ、おもしろさを体験
して来ただけに、苦労しながらも、居心地のいい自分の空間と、家族を手
に入れたマスターに拍手を送りたい。